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君想う声とわたがし が連携して書く小説と、 各自の小説を載せていくブログ★
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何の為に人は動く
 細い腕の剣が天空を切り裂く。
それを地上に受け止める体は、戸惑いの剣で素早く動く相手を、
しどろもどろ目で追う。
「はぁ……はぁ……」
「……」
会話は剣と剣が重なり合う金属の音のみ。
 ふいに金属のはじかれる音がしたので、一秒の間に自分の手を何度も確かめる。
 地面に突き刺さる金属の棒。
全身に溢れ出す水滴。
「怖いから……」
背に影を感じた。
「やめて……」
地面を見つめ、頭を抱えひざを突き、気絶しそうなほどの恐怖を感じる。
気づかぬ間に剣は地面から抜かれ、呼吸を始めた。
「……」
 喉に冷たくて硬い何かを感じた。
ずっと喉で詰まっていた空気をゆっくりと吐き出す。
呼吸はまだ鼓動よりも早い。
突きつけられた剣を見上げる。
「……」
 無垢な顔立ちがそこにはあった。
しかし、彼女はまだ少女といっても良いと思った。
透き通るような白い肌。
漆黒の長い髪は一本だけ耳の横に緩く結わえてあり、
少し灰色に霞む瞳が印象的だった。
 彼女に殺されるのだろうか。
剣を扱う彼女のその腕は、力強い物ではなかった。
「早くここから逃げろ」
彼女の初めて発した言葉が、空気に乗った。
「この国はもうなくなる」

―1― 
 「キーリ! キーリ!」
「何?そんなに慌てて。城の中では静かにしろといっているのは、いつもノアの方でしょう」
「ごめんなさい。でも大変なの!今すぐ着いてきて」
そう言われると、ノアの小さな手がキーリの足を走らせた。
「ち、ちょっと!」
ノアの引く手は、キーリを連れて白の舞踏会場に向かうらしい。
 舞踏会場は、キーリの部屋から長い階段を降りて、中庭に向かう途中にある。
「皆~! お待たせ!」
この通り、そこまで城内は広くない。
会場は、沈黙に溢れていた。
「皆、何かあったの?」
「せーのっ……」
沈黙の空気にキーリが問うと、会場が大きく息を吸い込んだ。
「ハッピーバースデー!」
「……え?」
「今日は、キーリと皆が最初に出会った日だよ」
代表して、ノアから花束が贈呈された。
「これからも宜しくね。女王様」
キーリは少し照れながら「ありがとう」と返してみせた。
 キーリはまだ少女と言っていい若さだ。
漆黒の黒髪に、霞んだ灰色の瞳。透き通った白い肌。
優しい顔立ちをした、まだ幼い歳で即位した女王。
 しかし、その顔立ちとは裏腹に、彼女はその細い腕で、剣を上手に扱う。
「ノアは、自分を守りすぎ。もっと攻撃しないと相手は怯まないよ」
 変わって、ノアは背が高いが臆病な少年だ。
彼はキーリが小さい時に拾われた。
ここ数ヶ月まで、彼はずっと城の図書室に篭っていた。
彼の真白の髪と肌、そしてアクアマリンのようにキレイな蒼い瞳は、見ているだけでも吸い込まれてしまいそうになる。
「はい! もう一回、お願いします」
 剣と剣が重なり合う音は、毎日の日課だ。
「ノア。少し休憩しようか。凄い汗」
「ねぇキーリ。もし、この国の外から戦争がやってきたらどうする?」
「大丈夫、私が皆を守ってみせるよ」
「本当に?約束だよ!」
キーリは静かに、うん、と頷いた。
 
―2― 
 「やっと見つけたよ。キーリ……」
望遠鏡を覗きながら、そう呟く男がいた。
「艦長。……艦長~?」
「あぁ?何だよ。今キーリに夢中になってんだから黙れよ」
「あの……舵は取らないでいいんですか?ぶつかっちゃいますけど……」
水面の波が揺れ、その上の船も同じに揺れる。
「お前……」
覗いていた望遠鏡を覗くのを止め、強く握り締める。
「何故それを早く言わない……」
そう言うと、彼はいつも決まって、こう怒鳴る。
「あほ野郎!!!」
「ひぃ~!」
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