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君想う声とわたがし が連携して書く小説と、 各自の小説を載せていくブログ★
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偽善な救世主 Ⅴ
脳裏に移ったのは、

――殺到する人々

――悲しく微笑む少女

――くらい顔をしている少年。これは俺か?

――そして、愕然とした少女の顔





全てを思い出した。



でも、この違和感はなんだ?
何かが違う。
どこかが間違っている。
確かめなきゃ。

―――あの、墓に行かなきゃ。


「ここに何かが、絶対何かがあるんだ」
――クスクス
「なんだ?」
――クスクスクスクス
「笑い声?」
――アハハハハハ!!
「誰だ!」
「・・・僕ですよ」
「お前は!?」
「クス、びっくりしたでしょ?」
「大丈夫なのか?」
「あぁ、あれですか。普通の人間なら死んでたでしょうね。《普通》ならね」
「普通じゃないのか?」
「僕は人間じゃありませんし。それにあの子も」
そういって燈真は墓を指差す。
そこに、一人の少女がいた。
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偽善な救世主 Ⅳ
「・・・・そういうことか」
「うん。そういうこと」
「・・・ついてねぇ
「?何かいった?」
「・・・別に」
朝登校したら同じクラスに燈真がいた。
あまりかかわりたくないと思っていたのに。
「あれ?そういえば彼女はどうしたんですか?」
「・・・別れた」
「あら、そうだったんですか」
(全部お前のせいなんだよ!)
あの後、彼女は、あんなおかしな人とかかわりを持ってる人とは付き合えない、といって家に帰ってしまったのだ。
「・・・最悪だ」
「今日からよろしくねぇ」
こいつの笑顔を本気で殴ろうと思った。

「また、来ちまったか」
学校帰り気がつけばまたあの墓地の前だった。
「来るべきじゃねぇと思ってんだけどな」
あたりはもう日が落ちてしまっているため、ほのかに薄暗い。
『また、来たか』
「っ!?・・・出やがったな。お前はなんだ!」
『貴様は本当に愚かだ。誰かを助けそれが偽善だとも知らず。きずいた時にはその現実から逃げる』
「なんのことだ!」
『思い出せ。貴様の過ちを。私が受けた苦しみを』

「・・・・・・あの」

驚きバッと振り返る。
「何を一人でやっているのでしょうか?」
そこにはむかつく燈真が居た。
「な、なんでもねぇ」
「お疲れですか?早く休んだほうが」
気がつくとあの声は聞こえてこなくなっていた。

その夜、
(くそっ!なんなんだよ、あれは)
先ほど聞いた声が理解できないのだ。
「思い出すったって、どうやって・・・」
おもむろにテレビをつける。
『只今速報が入りました。え~、先ほど、夏川街道の墓地付近にて、交通事故が起こりました。被害者は17歳、花岸燈真さん。現在も意識不明の重態のようです。警察は・・・』
「なっ!?」
頭が鈍器で殴られたような気がした。
「あいつが、撥ねられた?」
処理が追いつかない。
頭痛がしてきた。
そして、過去の記憶が甦った。


偽善な救世主 Ⅲ
目を覚ますと、そこは病室だった。
「・・・俺は」
頭の中がしっかりと整理されていない。
散歩に出て、墓地を見つけて、それから・・・。
「ッ!?」
考えていたところに頭痛が来た。
気を失うほどの痛みではないが、頭も中に無理やり何かをねじ込まれたような痛みだった。
霞む目の前の情景の変わりに、見覚えのない景色が広がった。
ぼろくさい中学校。せみの鳴き声。少女の姿。そして・・・墓地。

そこで意識が戻った。
「これは、昔の記憶?」
なぜかはわからないが核心が持てた。
「あの子は・・・」
少女の姿を思い出す。
それと同時になにか違和感を覚えた。

「木島さん、大丈夫ですか?」
ナースが入ってくる。
「気がつかれたんですね。通りかかった学生さんが見つけて知らせてくれたんですよ」
(・・・・・・学生?)
その言葉を不信に思いながら、一応お礼だけはのべておく。
「そうですか。ありがとうございました」
「たぶん過労だと思いますよ。きょうは家でゆっくりしてくださいね」


病院を後にした栄一は考えていた。
あの墓地に何かがあるのだろうか、と。
気がつくと墓地の前にいた。
そこにはあの怪しげな男――――花岸燈真がいた。
「お前、助けてくれたんだってな」
「助けたのはお医者さん。僕じゃないよ」
そういって笑っている。
「お前なんでこんなとこに居るんだ?」
「ただの散歩だよ。・・・君は?」
「俺も散歩だ」
ぶっきらぼうにそう答える。
「そうなんだ。あ、もうこんな時間だ。じゃぁ、また明日ね」
「え?あ、あぁ」

(結局何もなかったな)
家に帰宅した栄一はそう思いながら夕飯をたべていた。
「あいつ、また明日って言ってたよな」
その疑問は翌日、登校と同時に晴れた。
偽善な救世主 Ⅱ
二人の会話を聞いていたその男は、なんとかして二人に近づこうと考えていた。
べつに、ふたりの中をわるくしたいとかそういうことではない。
ただ、男のほうに見覚えがあったからだ。
男はあれやこれやと考えた末、全てを放棄して単刀直入に話しかけた。
「君、栄一君だよね?」
相手は驚いている。
「え、そ、そうだけど。えっと、誰?」
「やっぱりそうか。覚えてないのか?僕は花岸燈真だよ」
「・・・・・・知らん」
半眼で見下ろされてしまった。隣の彼女らしき女性もいぶかしげな顔つきになっている。
「ちょ、待って!ほんとにわからない?ほら、中学でおんなじクラスメイトになった」
中学ときいたとたん相手は苦い顔をした。
(思い出したかな?)
「ごめん。俺、中3から前の記憶がないんだ」
「なっ!?・・・そうだったんだ。なんか、ごめんね」
「ぃゃ、いいって。こっちこそ覚えてなくてごめんな」
そういって彼らは歩いていってしまった。
「・・・覚えてないんだ。あのことも」
燈真は小声で、そう呟いた。


次の日
っといっても日曜日なので特にやることがない栄一は、散歩をしていた。
散歩は毎回違うルートを通っている。
町を覚えるためだ。
ある程度歩くと、突き当たりの辺りに墓地が見えた。
(ここはあまり通らないほうがよさそうだな)
そう思いながら墓地の隣を通ると、
「痛っ!!」
急な頭痛に襲われた。
『・・・偽善者め』
「っ!?誰だ!!」
『おろかな偽善者め。逃げようとも無駄だ』
頭の芯に響く声はだんだんと大きくなっていく。
女の声のような気がした。
「・・・く・・・・・・」
意識が、とんだ。
偽善な救世主 Ⅰ
そこは墓場だった。
周りには見渡す限りの墓標。
そこに一人、ぽつんと立ち尽くしている男が居た。
死者を敬うでもなく、はたまた墓を荒らそうとしているでもなく。
ただ、泣いていた。
目の前の墓標には線香と花束が添えられていて、独特な空気が周りを取り囲んでいる。
その墓標にはこう刻まれていた。
―――華蓮家 華蓮泉 ここに眠る




雨降りとは嫌なものだ。
気分を憂鬱にさせる。
部屋の中は湿気でじめじめするし、外で散歩をすることもかなわない。
「・・・暇だな」
一人でそう愚痴る。
木島栄一はこの上なく暇だった。
転校生で新学期が始まったばかりだということもあり、友達はまだできていないので、雨が降る日は家で静かにしているしかない。
「面白いことねぇかなぁ」
と、
Calling♪ Calling♪
独特の着信音と共に携帯が震えた。
「もしもし、栄一だけど」
『お、栄ちゃん久しぶり!・・・でないかと思った』
「あのなぁ、俺はそんなにと人をけぎらってねぇよ」
『冗談、冗談。でさ、今暇?』
「暇で死にそう」
『そか、じゃぁ、ちょっと付き合って』
(おもしろそうだな)
栄一は心の中でそう思い、意気揚々と雨の中をかけて行った。

栄一にはまだ友達はいない。
これは本当のことだ。
だが、彼女は居たりする。
「お待たせ。待った?」
「う~、まったよ~。まぁ、いきなり呼び出しちゃったから許すけど」
「ごめんな。で、話って?」
「あぁ、それなんだけど。栄ちゃん、転向してきたばっかジャン?だからさぁ、案内したげようと思って」
「なんだ、そんなことか」
もう少し面白いことだと思っていたのですこしがっかりする。
「なんだとはなによ!!せっかくあたしが言ってあげてるのに」
「わりぃ。よろしく頼むよ」
いつもと 変わらない言葉の掛け合い。
ひとつだけ違っていたのは、二人の会話にずっと聞き耳を立てている男が居たことだけだ。
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